『誰が負担、原発の後処理費』(社会新報02年4月10日)
2002年3月31日(日)付の「朝日新聞」には、このような記事が出た。「原子力発電所で発電をした後の放射性廃棄物処分や発電所撤去、核燃料再処理などのいわゆるバックエンド(後処理)費用が、電気事業連合会による初の長期資産で、2045年までに全国で約30兆円にのぼることが明らかになった。」原子力発電は現在52基が商業運転中である。原発の稼働期間は40年と想定し、一定の増設を見込んで解体と撤去の積立費用、高レベルと低レベルの放射性廃棄物の貯蔵と処分など、一連の費用を織り込んだ数字であるという。この数字を知らされ、原子力発電のコストの高さに改めて驚いてしまう。原発の技術というのは、一般的には実にわかりにくい。専門家が技術を専有し、安全だという説明が一般には行われてきた。そうしていながら、現実にはありえないはずの事故が起こり、被ばくした人が死んだりもした。原発を建設しようとした土地には必ず反対運動が起こり、住民を二つに引き裂き、取り返しのつかない形で住民を分断してきた。それでも建設を強行してきたのは、火力発電のように大量の二酸化炭素を放出しないことと、一度建設してしまえば、その施設は、ほぼ永久に使うことが出来る。つまり、コストが安いということではなかったか。原発ができると、その市町村ならびに周りの市町村に色々な名目の補助金が下り、市民会館やらスポーツセンターがどんどんできる。それを目当てに市町村は、経済の活性化という名目で原発を誘致する。つまり、飴を沢山ばらまいてきて、やっと原発を建設してきたというのが実情である。その飴のコストも大変なことだ。しかし後処理にこんなコストがかかるのだとしたら、実際にその費用を負担しなければならない電力業界には、原発への見直しの機運ができても当然なのである。そうでなければ電気事業連合会が原発のコストを発表する理由は無い。ここで思い出すのは、香川県の豊島(てしま)のことである。豊島に持ち込まれた主な産業廃棄物は、車のプラスチックの部分を粉砕したシュレッダーダストである。産廃の処理業者は、ミミズの養殖の材料という名目でシュレッダーダストを持ち込み、小さな島に不法投棄してきた。そして、何十億円だか何百億円だかを設けたのである。その業者は儲けるだけ儲けたのだが、不法投棄が社会問題になると、再処理する責任能力がない。そこで香川県が公金によって処理することで問題を解決することになったのである。原発の30兆円の後処理の費用と言うのは、誰が負担するということになるだろう。電力業界だけで処理できれるのだろうか。
よく、「3.11原発事故で立松なら何を語っただろう」と言われるが、2002年すでに、今の現状を警鐘していた。それにしても「社会新報」とは懐かしいが、和平発言、和平日記を読み直すと何かを紐解いてくれる。
(和平発言「誰が負担、原発の後処理」)