円空の長良川
 円空の入定塚といわれるところが、関市の長良川河畔にある。生涯十二万体の仏像を彫り、救っても救っても救いきれない数の人々を救いつづけてきた円空は、すでに生きている菩薩であったが、なお即身成仏をとげようとした。生きながら仏になって生涯を完成させようとしたのである。
 五穀断ちをして、身体を清浄に保ち、生きたまま棺の中にはいって埋められた。村人は地面に耳をあて、地中から読経の声を聞いた。その声が聞こえなくなって、円空の死を確認したのだという。
 全国を遊行して作仏をし、故郷の美濃に帰って即身成仏をとげる。なんとも激しい生き方であり、激しい死に方だ。
 円空入定塚のすぐそばを流れる長良川は、そんな人物がここにいたことを知ってか知らずか、豊かな流れを保っている。この長良川は、小瀬鵜飼がおこなわれ、人が集まるところだ。私は鵜飼をする鵜匠の船に乗せてもらったことがあるが、円空のことを考えないわけにはいかなかった。

日本公園村 2006年10月号
私の好きな風景