自由自在の造形で解放感
 円空が白山信仰の霊地高賀神社に残した十一面観音菩薩立像は、丸太の中からごく自然に生まれ出たという風情がある。細長い十一面観音(写真中央)と、それよりもほんの少し背の低い善女龍王立像(同右)と善財童子立像は、内側に向かってそのまま合わせると、一本の丸太こ戻る。木の性質そのままに割り、ノミをひとしきり振るうと、慈悲相が現れ、線の具合によって忿怒相(ふんぬそう)にもなる。力も配分も、まったく無理がない。丸太の中にそもそも仏の姿が埋まっていたのだと思えてくる。円空は自由自在なのである。自由に造型をするから、見るほうも解放されたのびやかな気分になる。この三体は、円空の最高傑作であると私は信じる。