知 床
 知床の季節の流れは濃密である。したがって、一度訪れただけては一瞬の知床を知ることはてきるかもしれないか 知床を知ったということはできない。
 知床を含めた北海道の東部か日本の他の地域とまったく違うのは、冬に流氷かやってくることてある。一月下旬 夜ちょっと風が吹いたなあと思い朝窓から眺めると、昨日まて確かにあった海がなくなり一面の大氷原となっている。オホーツク海一帯を埋めつくす。
流氷は 北半球で最も南にくる海氷である。また知らない人は、自分の人生のためにも一度くらいは見たほうかよい。
 春になると 大地を覆っていた雪が溶けて秋蒔の小麦が緑の葉を見せると同時に、流氷も溶けていく。
流氷の中には珪藻という植物プランクトンがはいっていて、流氷が溶けると同時に海中に散らばる。これが命の源だ。春の知床の海はミルクをねっとりと煉ったように白濁し、この植物プランクトンを食へて動物プランクトンが大発生する、これかちょうど卵から孵ったばかりのサケやマスやスケソウダラの餌となる。腹がふくれるほどに食べて元気−杯の稚魚は、ここから
数年にわたる何万キロもの旅をはじめるのだ。
 春は喜びである。知床の森にはいると流れはじめた水の澄んだ音か響き、日一日と若葉は緑の色を濃くしていく。時の流れる音が聞こえ、過ぎゆく時の後姿が見えるような気がする。流氷を避けて陸に上げられた船が、さかんに海を走りまわっている。この季節にとれるのは、ホッケと毛カニだ。
 いい季節は夏から秋までつづき、最も美しい流氷がやってくる。それが知床である。
OFF 2004年4月